今回紹介するのは「Mothmen 1966」。steamにて発売中。
1966年のしし座流星群という天体ショーと共に起きた奇妙な出来事を、4人の主人公の視点を切り替えながら追うアドヴェンチャーゲーム。
歴史学者のリーは、恋人ヴィクトリアを誘い、しし座流星群を見ながらのディナーデートを計画していた。
目的地は、ホルトという人物がオーナーのガソリンスタンド近く。楽しい夜になる事を考えながら車を走らせるが、ヴィクトリアは浮かない様子。
目的に到着すると、小説家を名乗るルーという男が、この近くで奇妙な生物を目撃しなかったか?と尋ねてくる。
そして、しし座流星群が夜空に出現した時、森から奇妙な生物が姿を現してきた・・・
ゲームは、オーソドックスなコマンド選択式アドヴェンチャーゲーム。
時々アクセントとしてミニゲームが挿入されているが、基本1本道で物語を楽しむ事に重点が置かれている。
途中の選択肢には、間違ったコマンドを選んだ時点でゲームオーバーとなるものも存在する。(その場からやり直しが可能)
この仕様は、レトロPC時代のアドヴェンチャーゲームへのオマージュだろう。
タイトルにある「モスマン」は、アメリカウェストバージニア州で目撃情報が多発している蛾の頭を持ったUMA。
正直、モスマン自体ゲームにほぼ登場する事なく物語は進行する。そのモスマンを始め、しし座流星群・南北戦争・土着信仰等のキーワードが提示されるが、どれも詳しく解説される事はない。
しかし、それぞれのキーワードと共にレトロ調グラフィックで表示される画面からは、確かに得も言われぬ恐怖を感じる事が出来る。
ゲームのコンセプトは、当時勢いだけで庶民に娯楽を提供していたパルプ小説を元にしており、そのポイントはブレることなく再現されている。
「ピクセル・パルプ(ドット絵のパルプフィクション)」と銘打たれただけの事はある。
冒頭のホルトの祖母の話から、よく読むと「?」と思ってしまうのだが(もしかしたら誤訳かも)、そういう事を考えさせない様に次々に物語の視点が変わり、とにかく話についてこさせようとする。
この強引さがある意味パルプ小説の魅力で、振り返って読み直した時点で物語の熱量が覚めてしまうのだ。
良く判らないがスゴい!と思わせる、それが大衆娯楽の王道ではないだろうか?
パルプ小説を題材とし、敢えてグラフィックをレトロPC調の粗いドット絵で再現している事も全体の雰囲気を引き締めている。解像度の低い画像はそれだけで想像力を喚起させるモノであり、それは小説を読む事へのフォローだ。
内容もボリュームはなくミニゲームの操作性も悪い(全てコマンド選択で行う)。しかし、グラフィック・サウンドを敢えてレトロ調にした雰囲気だけで、物語にグイグイ引き込んでしまうので満足感はある。
物語の雰囲気や時代設定から、現在でもカルト的人気を誇る小説家「H・P・ラブクラフト」を想像させる。彼(または彼のフォロワー)の小説が好きな方は、楽しくプレイ出来る内容だろう。
尚、この「ピクセル・パルプ」は3部作の様で、ゲームには次回作の体験版がおまけとして収録されている。
続編も含め続きが楽しみな作品である。
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