
今回読破したのはこちら。
石井ぜんじ著「ゲームセンターを10倍おもしろくした本!」
元ゲーメスト編集長である著者が、当時の役職目線でゲーメストと発行元である新声社の内部事情を語る内容。
ゲーメストは、言わずと知れた伝説のアーケードゲーム専門誌。
個人的に興味深かったのは、やはり新声社倒産の真相だ。
当時疑問に思っていたのが、ゲーメスト、というか新声社の無謀とも言える雑誌の創刊ラッシュだ。本誌とは別に、ムック・コミック誌・家庭用ゲーム誌等〇〇ゲーメストとゲーメストの名を冠した書籍が多数刊行されていた。素人目にゲーメストの売り上げに便乗した無茶な刊行だと思っていたのだが、これは新声社上層部の決定であった様だ。
更に、ゲームセンター経営・グッズ販売店拡大等、大きく手を広げた事業が結果として経営の脚を引っ張ったという。
これは、このまま街のゲームセンターの衰退と重なる。
ハッキリ言うが、ゲーメストは消滅する運命だった。それは、ゲームセンターのゲーム(アーケードゲーム)を扱う専門誌として当然の帰結であったと思う。
アーケードゲームはインターネットの整備で駆逐された。ゲームを自宅でネットを介してプレイする環境が整っていれば、ゲームを基板で売る必要はない。
大型筐体がある、という意見もあるだろう。しかし、大型筐体は価格が高く、購入出来る体力があるゲームセンターがどれだけあるのか?また、大型筐体だけでゲームセンターが成り立つのかは甚だ疑問だ。ゲームセンターにゲームが無ければ専門誌であるゲーメストは商売にならないという構図だ。
しかし、この件に関し、対戦格闘ゲームバブルで先の事が見えず、潰れて行ったゲームセンターに勤めていた身からすると、新声社上層部を責める事は出来ない。世の中が対戦バブルに溺れていたのだから。
そんな中、ゲーメスト本誌のクオリティを維持し続けた著者には頭が下がる想いだ。
残念ながらその功績は評価はされず新声社は倒産した。
いずれゲーメスト共に沈んでいく運命だった新声社だが、それならば、尚の事唯一売り上げを担保できていたゲーメスト本誌編集部の意見は聞いておくべきだったのだろう。
最後に、ゲーメストは確かにゲームセンターを10倍面白くした雑誌である。雑誌が評価してきたゲームや企画は、間違いなく現在のゲームの面白さや付随するカルチャーに寄与している。そんな雑誌を作り続けた著者を始め、ライター・編集者には改めて敬意を表したい。
Comments