久し振りの通常コラム。
私が子供の頃、近所の書店が各家庭に注文書籍を配送してくれていた。うちでは、いわゆる「小学〇年生」といった児童書が定期配送されていたのだが、それとは別に「コロコロコミック」等の児童向け漫画書籍も来ていた気がする。(当然親が注文を入れていたのだろう)
各書籍が店舗に出向く事無く届けられていたので、発売日前は書店のオヤジさんが運転するバイクの音に耳を傾けて、楽しみに待っていた記憶がある。
とはいえ、田舎だったので、書籍は発売日に入荷する事は無く大抵1日遅れ。酷いと2~3日遅れる事もあった。これは、書籍の流通を知った今では致し方ない事なのだが、当時は発売日に目的の書籍が手に入らない事に、子供ながらかなり憤慨していた。
少し話はズレるが、高校生の頃、駅の売店だけは週刊誌が発売日前日に入荷していて、毎週月曜日に「週刊少年ジャンプ」を購入する事が出来たのだが、これがスゴく嬉しかった事を覚えている。それだけ発売日(前日)に目的の書籍を手に入れる事に飢えていた。
しかし、この事は専門学校入学時、東京に上京した事で解消される。東京では前日は稀だが、発売日にはキッチリ書店で目的の書籍を手に入れる事が出来た。これだけで上京した甲斐があったと思っていた。
さて、今思うに、前述のサービスは個人書店が生き残る為のかなり良い戦略だったと思える。(御用聞き文化として、昔の田舎では当たり前だったのかもしれないが・・・)
というか、この顧客を離さない為の定期配送は、かなり先を見たサービスを展開していたのではないだろうか?
それが現在ネット配送になったのだが、結局ネット配送事業の煽りで個人経営の書店は姿を消していく事になる。大型書店でも苦戦しているのだから、個人経営はひとたまりも無かったはずだ。(件の書店も健闘したようだが閉店し、今は跡地が喫茶店となっている)
もちろん、それだけが原因ではないが、地域から書店が消えていく事は悲しい事だ。まだ、我が地域は大型書店が2店舗ほど残っているが、他の地域では書店がゼロ、という地域もある。
確かにネット配送は便利であるが、デジタルではない紙媒体の書籍は直に触り、確かめたうえでの購入が望ましい。
紙の重さを感じ、ページをめくる音やインクの匂い等を感じながら文字や画を追う行為を人類の記憶から無くすべきではない、と強く感じる。これに理論的な理由はない。単純にノスタルジーであり、古い人間のたわごとだ。それでも、強く訴えかけて行かなければならないと思っている。
個人的に紙媒体が消滅する事は無いと思っているが、書店として今のギリギリの状態を維持して行くと楽観もしていない。
書店が消える時、それは身近に書籍に触れる場所が消える事であり、危惧すべき事だ。コンビニがあれば雑誌だけでもなんとか、という感じだが・・・
そして、そこから踏み込んで教科書がデジタルになった時、それ以降の子供たちにアナログ書籍の良さを教えていく事が出来るのだろうか?
そう考えた時、書籍配送は脱アナログ書籍に歯止めを掛ける一つの手段ではないだろうか?・・・と、昔を思いながら考えた次第だ。
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